株式会社健康保険医療情報総合研究所

Planning, Review and Research Institute for Social insurance and Medical program (abbr. PRRISM)

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病院職員も知っておきたい調剤薬局経営のはなし(第1回/全3回)

COLUMN

2020.10.14

第1回 調剤薬局の仕事~基本的な業務~

病院と調剤薬局は医療に貢献する使命が共通していますが、それぞれがどのような業務を行っているか、知られていない部分があるかもしれません。

そこで、今回から3回にわたり、調剤薬局の仕事や運営について紹介いたします。薬局の業務は病院の業務と似ているところがあるため、薬局でどのような仕事が行われるかを知ることで、自院の業務改善の参考にしていただければ幸いです。また、薬局業務を把握することで、連携を改善・強化し、より最適かつ効率的な医療体制を構築することができます。

第1回では、薬局薬剤師の基本的な業務について紹介します。

薬局薬剤師の役割とは何か

医療現場で患者と関わる薬剤師は、大きく病院薬剤師と薬局薬剤師に分けられます。

病院薬剤師は、病棟業務や院内処方など院内での仕事が主になります。対応するのはほぼ院内の患者に限られ、急性期の患者など高度な症例や救急対応など緊急性を要する症例への対応力が求められます。

一方、薬局薬剤師は外来患者に対して薬剤の交付を行います。門前病院の処方を含むさまざまな医療機関の処方箋に対応するだけでなく、老人施設や在宅患者への対応も求められます。薬局薬剤師は医師の処方箋と患者の状態などをチェックし、副作用や薬剤同士の相互作用を未然に防ぐことにより、患者に対してより効果的な薬物治療を実現することができます。

また、OTC(注:「Over The Counter:オーバー・ザ・カウンター」と呼ばれる一般用医薬品などの販売)や健康相談などを通じて、地域住民の健康増進に貢献しています。

調剤業務

薬局で患者に対して薬剤を交付する際、以下の順序で業務を行います。

〇 処方箋受付業務
患者が薬局で薬剤を受け取る場合、処方箋が必要です。薬局では患者情報・保険情報を確認し、ジェネリック医薬品の変更の可否を確認します。

〇処方鑑査
お薬手帳や薬歴、または薬剤の特性や相互作用等から、処方箋の内容が適切かどうかを確認します。もし適切でなければ、後述する疑義照会を行い、医師へ問い合わせます。

〇調剤
処方箋の内容通りに正確に薬剤を取りそろえます。散剤や水剤は、正確に計量し、その結果を残します。一包化の場合は、服用時点ごとに薬剤を正確に分包します。

〇鑑査
調剤した内容が処方箋の内容と合致しているか確認します。散剤や水剤は計量と内容があっているかを確認し、一包化では薬剤が正確に入っているかを1包ずつ確認します。また、ごみなどの混入がないかも同時に確認します。

〇服薬指導・投薬
鑑査が終わったら、患者に対して薬剤の説明を行います。その際に、患者の状態などを情報収集し、薬剤の交付に支障がないかを最終確認します。そののち、薬剤の説明をし、注意点などを確認します。すべてが問題ない場合は、患者に疑問点がないかを確認したうえで、薬剤を交付します。

〇薬歴記載
服薬指導終了後、患者から得た情報を調剤録に記録します。服薬指導に欠かせない記録であると同時に、調剤報酬請求の根拠ともなります。

薬歴に記載する事項は次のように定められています。

(厚生労働省「保険調剤の理解のために(平成30年度)」より一部改変)

・患者の基礎情報(氏名、生年月日、性別、被保険者証の記号番号、住所、必要に応じて緊急連絡先)

・処方及び調剤内容(処方した保険医療機関名、処方医氏名、処方日、処方内容、調剤日、処方内容に関する照会の内容等)

・患者の体質(アレルギー歴、副作用歴等を含む)、薬学的管理に必要な患者の生活像及び後発医薬品の使用に関する患者の意向

・疾患に関する情報(既往歴、合併症及び他科受診において加療中の疾患に関するものを含む。)

・併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品及び健康食品を含む。)等の状況及び服用薬と相互作用が認められる飲食物の摂取状況

・服薬状況(残薬の状況を含む。)

・患者の服薬中の体調の変化(副作用が疑われる症状など)及び患者又はその家族等からの相談事項の要点

・服薬指導の要点

・手帳活用の有無(手帳を活用しなかった場合 はその理由と患者への指導の有無)

・今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点

・指導した保険薬剤師の氏名

薬局薬剤師は情報が常に最新になるように調剤録を更新していく必要があります。

疑義照会

調剤業務の中で、処方箋内容に疑わしい点があった場合、処方した医師に問い合わせる必要があります。これが疑義照会です。薬剤師法第24条により、「薬剤師は、処方箋中に疑わしい点があるときは、その処方箋を交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と規定されています。

具体的な問い合わせ内容として、以下が挙げられます。

・処方箋の記載の疑義(処方医情報、氏名等の患者情報、偽造処方箋など)

・薬剤の疑義(相互作用、副作用歴、用法・用量、重複投与、投与日数制限など)

・残薬等の疑義(残薬がある、または処方薬に不足がある)

・その他の疑義(保険情報・公費適応情報など)

疑義照会は適正な医療と患者の安全を守るために重要な業務です。

OTC等販売業務とお薬相談、健康相談

調剤薬局では処方箋による調剤のほかに、OTCを販売しています。風邪の初期症状など軽度な症状に対して適切なOTCを提案・選択することで、患者のセルフメディケーションをサポートします。もちろん、患者の状態によっては適切な診療科の受診を提案します。

また、現在服用中の薬剤について相談でき、薬剤師にしっかり説明やアドバイスを受けることができます。薬剤の相談だけでなく、サプリメントや食事のアドバイスも可能ですので、日常の健康増進にも薬剤師は貢献しています。

今回は、薬局薬剤師の基本的な仕事をご紹介しました。少しでもイメージをお伝えできたら幸いです。次回は、「薬局薬剤師に求められるもの」というテーマで、制度の視点や病院との連携の視点から、薬局薬剤師が果たすべき役割について解説いたします。