株式会社健康保険医療情報総合研究所

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重症度、医療・看護必要度はどう変わってきた?(第7回/全8回)

COLUMN

2024.05.01

今回のコラムでは、重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)の改定について触れたいと思います。看護必要度は2年に1度の診療報酬改定において見直されていますが、評価を実施される医療従事者の皆様の中には、「また変わるの?!」と思われる方がいらっしゃるかも知れません。

看護必要度を見直す目的は、「急性期の入院患者」を把握する評価手法として適切なものであるためでした。詳しくはコラム2 に記載してありますので、そちらをご覧ください。


本コラムでは、令和4年度および令和6年度の診療報酬改定における看護必要度の主な論点を振り返ります。その論点を受けて看護必要度がどのように変わったのかについてみてみましょう。

1.令和4年度診療報酬改定における論点は何?

それでは、令和4年度の改定について論点を振り返ってみましょう

令和4年度の改定では、看護必要度のA項目「心電図モニターの管理」の削除、「点滴ライン同時3本以上の管理」「輸血や血液製剤の管理」の定義の見直し、B項目「衣類の着脱」の削除、C項目「骨の手術」の該当日数の短縮が論点になりました。それを受け、各評価項目について削除または見直した場合の入院基本料・病床数別の重症患者割合への影響がシミュレーションされ、その結果をもとに議論がなされました。

診療側と支払側の意見はまとまらず、最終的に公益委員の裁定により改定内容が決定されました。今回の変更点を下表にまとめました。なお、B項目「衣類の着脱」の削除、C項目「骨の手術」の該当日数の短縮(11日間から10日間へ)の見直しは見送られました。

A項目<モニタリング及び処置等>

【実態】「心電図モニターの管理」に該当する患者のうち、自宅退院した患者について、退院日もしくは退院前日まで該当する患者が、一定数いることが分かった。また、「心電図モニターの管理」を評価項目から削除した場合のシミュレーションにより、看護必要度Ⅰで18.9%、看必要度Ⅱで11.9%が、評価基準を満たさなくなる結果となった。

【論点】「心電図モニターの管理」は、急性期における評価指標として適切か?
(支払側)退院日まで心電図モニターの装着がある実態がある。実態に即して評価項目から除外すべき。
(診療側)処置や手術等のない、内科系急性期患者において、心電図モニターは重要かつ欠かせない指標である。今回見直すべきではない。

【結果】「心電図モニターの管理」を削除



【実態】「点滴同時3本以上の管理」に該当する患者のうち、使用薬剤数が2種類以下の 患者が存在することが分かった。

【論点】評価指標として適切か?
(支払側)使用薬剤が2種類以下の実態がある。評価項目から削除すべき。
(診療側)改定の度に評価項目が変わるのは現場の負担である。また、コロナ禍の状況を踏まえると、さらに実態の正確な把握をすべき。今回見直すべきではない。

【結果】「点滴ライン同時3本以上の管理」を「注射薬剤3種類以上の管理」に変更



【実態】「A 2点以上かつB 3点以上」または「A 3点以上」の評価基準を満たす患者について調べたところ、「輸血や血液製剤の管理」有りの場合に、診察が頻回な患者の割合が高く、看護師による直接の看護提供の頻度も高いことが分かった。

【論点】評価を見直してはどうか。 (ほぼ議論されていないが、「実態」と「シミュレーション結果」から改定に至る。)

【結果】「輸血や血液製剤の管理」の点数を1点から2点に変更

中央社会保険医療協議会 総会(第495回)総-2 資料より一部要約


なお令和4年度診療報酬改定では、コロナ禍の状況を踏まえ看護必要度の改定後の影響を緩和する措置も取られました。シミュレーションの結果を鑑み、急性期一般入院料1(200床未満の病院を除く)以外の重症患者割合が引き下げられたということが、答申に記載されています。

2.令和6年度診療報酬改定における論点は?

令和6年度の診療報酬改定における重症度、医療・看護必要度に関する主な論点を振り返ってみます。

6年度の改定では、入院患者の状態に応じた適切な評価を行うために、急性期一般入院料1における評価項目や該当患者割合の基準の見直しが論点になりました。評価項目の見直しに当たっては、4つの案について該当患者割合への影響等のシミュレーションが実施され、その結果をもとに中医協で議論が行われました。診療側と支払側の意見の隔たりが大きかったため、今回も最終的には公益委員の裁定により、改定内容が決定しました。

急性期一般入院料1についてはB項目を指標とした評価を廃止し、該当患者割合についてはA項目とC項目の組み合わせによる2つの基準が設けられ、それぞれについて基準値が設定されることになりました。

A項目〈モニタリング及び処置等〉

実態】軽症・中等症の高齢者の救急搬送が増加しているが、誤嚥性肺炎や尿路感染症などの高齢患者には、救急搬送後に専門的な治療や処置があまり行われていないことが分かった。

論点】救急搬送後の入院/緊急に入院を必要とする状態」の評価日数をどのようにすべきか。
(支払側)評価日数を1日または2日に短縮するべき。
(診療側)評価日数を短縮すべきではない。

結果
「救急搬送後の入院」及び「緊急に入院を必要とする状態」について、評価日数を2日間に短縮

実態】 「注射薬剤3種類以上の管理」の該当割合は、急性期一般入院基本料では入院2日目の患者においてピークを迎えた後に低下し、入院10~20日目の患者から再び上昇する傾向があった。「注射薬剤3種類以上の管理」に該当する日における注射薬剤の成分は、「アミノ酸・糖・電解質・ビタミン」、胃酸分泌抑制薬、インスリン、抗菌薬が多く、該当日数が長くなると、「アミノ酸・糖・電解質・ビタミン」の割合が上昇し、抗菌薬や抗ウイルス薬などの割合が低下する傾向であることが分かった。

論点】急性期医療における重点的な医療・看護を評価するとともに早期の経口摂取開始の取組を推進するため、「注射薬剤3種類以上の管理」の対象薬剤や上限日数を検討し、あわせて入院初期を重点的に評価することについてどう考えるか。
(支払側)対象薬剤からアミノ酸・糖・電解質・ビタミンを除外するとともに、評価日数に上限を設けるべき。
(診療側)見直しによる悪影響が出ないかを議論すべき。

結果】「注射薬剤3種類以上の管理」について7日間を上限とし、対象薬剤から静脈栄養に関する薬剤を除外

実態】必要度Ⅰの届出施設において、急性期一般入院料2、4、5で「呼吸ケア」の該当患者割合が上昇していた一方で、該当患者における必要度Ⅱの対象となる診療行為の実施割合は低下していた。また、必要度Ⅰ届出施設において「創傷処置」の該当患者のうち必要度Ⅱの対象項目の実施割合が低く、該当割合自体は必要度Ⅱ届出施設よりも高い傾向にあった。

論点】評価負担の軽減や評価基準の平準化のため、「呼吸ケア」や「創傷処置」の項目では評価基準を必要度Ⅱに統一することをどう考えるか。
(支払側)評価基準を必要度Ⅱに統一すべき。
(診療側)見直しによる悪影響が出ないかを議論すべき。

結果】創傷処置と呼吸ケアの評価を必要度Ⅱに統一

実態】B項目の「専門的な治療・処置」の「抗悪性腫瘍剤の使用」の対象薬剤について、入院で使用する割合にばらつきがあることが分かった。

論点】外来での化学療法の実施を推進する観点から、「抗悪性腫瘍剤の使用 (注射剤のみ)」及び「抗悪性腫瘍剤の内服の管理」について必要な見直しを行うのはどうか。
(支払側)入院で使用する割合が低い薬剤を評価の対象から除外するなど、外来化学療法を推進する流れに逆行しないような対応を検討すべき。
(診療側)抗悪性腫瘍剤の使用等については、急性期一般入院料1や特定機能病院において実施率が高く、急性期医療の評価として適切であるが、2点なので抗悪性腫瘍剤を使用しただけでは基準に該当しない。3点に引き上げるべき。

結果
・「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)」について、対象薬剤から入院での使用割合が6割未満の薬剤を除外
・「抗悪性腫瘍剤の内服の管理」について、対象薬剤から入院での使用割合が7割未満の薬剤を除外
・「抗悪性腫瘍剤の使用(注射剤のみ)」、「麻薬の使用(注射剤のみ)」、「昇圧剤の使用(注射剤のみ)」、「抗不整脈薬の使用(注射剤のみ)」、「抗血栓塞栓薬の使用」及び「無菌治療室での治療」の評価について、2点から3点に変更

B項目〈患者の状況等〉

実態】入院初日にB得点が3点以上である割合は、特定機能病院や急性期一般入院料1で低く、急性期一般入院料2~5や地域一般入院料1で高いことが分かった。

論点】B項目は介護業務を評価している性質がある。急性期の医療ニーズに着目した評価体系とする観点からは、7対1病棟の必要度基準においてB項目は適さないのではないか。
(支払側)急性期の機能を適切に反映するため、B項目を用いるべきではない。
(診療側)単純にB項目をなくすだけでは、A得点2点以上の患者が全く評価されなくなる。A得点2点に該当する患者も評価できる仕組みとすべき。

結果】急性期一般入院料1の該当患者の基準からB項目を除外し、下記の該当患者割合①②を新たに設定
該当患者割合① 「A得点が3点以上」または「C得点が1点以上」
該当患者割合② 「A得点が2点以上」または「C得点が1点以上」

C項目〈手術等の医学的状況〉

実態】評価対象となっている手術の一部に実施率9割未満のものがあり、他方でC項目の対象となっていない手術に実施率が9割以上のものがあることが分かった。

論点】C項目の対象となる手術等については、年度によって入院での実施率にばらつきがある可能性も踏まえ、検討すべき。
(支払側)実態を踏まえて対象技術と対象日数を見直すべき。
(診療側)対象手術及び評価日数について、直近のデータを踏まえて拡充すべき。

結果】対象手術及び評価日数を変更

3.おわりに

本コラムでは評価項目がどう変わったかについて、実態や論点とあわせて触れてみましたが、いかがでしたでしょうか。看護必要度は評価の実施に関わるため、改定後は「何が変わったか」のみに注目されることが多いかも知れません。しかし、背景にある論点を押さえることで、改定内容への理解も深まるのではないかと思います。

これから院内研修等を担当される方もいらっしゃるかと思いますが、看護必要度に対する理解を深める機会として、本コラムをご活用ください!



その他、重症度、医療・看護必要度の知りたい内容については、下記コラム(全8回)をぜひご覧ください。

コラム1:重症度、医療・看護必要度とは?
コラム2:重症度、医療・看護必要度は何のため?
コラム3:重症度、医療・看護必要度は何を評価する?
コラム4:重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡの違いは?
コラム5:重症度、医療・看護必要度はいつ評価する?
コラム6:重症度、医療・看護必要度は何点必要?何割必要?
コラム7:重症度、医療・看護必要度はどう変わってきた? ※当ページ
コラム8:病院全体で取り組む重症度、医療・看護必要度の精度向上