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病院全体で取り組む重症度、医療・看護必要度の精度向上(第8回/全8回)

COLUMN

2022.02.07

重症度、医療・看護必要度の精度を上げるにはどうしたらよいでしょう?

これまで、コラム1の「重症度、医療・看護必要度とは?」から始まり、重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)の目的や評価内容(コラム3)などに触れてきました。

看護必要度は、看護配置や入院料の適正を保つためにも正しく評価されなければなりませんが、実際に評価されている看護師の方々からは「受け持ち患者のすべてを正確に評価するなんて、大変…」といった声が聞こえてきそうです。

もちろん、看護師だけでは正確な評価の実現は困難です! そもそも、看護必要度の評価は看護師だけで行うものではありません。連載最終回となる本コラムでは、病院全体で取り組む看護必要度の精度向上についてご紹介します

看護必要度評価が正しく反映されないのは、どのような場面でしょうか。

例えば…
・知らない間に医師が創処置を実施していた。
・昨日の評価をそのまま反映し、修正し忘れた。
・夜勤帯でシリンジポンプの使用が開始となったが、反映が漏れてしまった。
などです。

どれだけ“日々大変な状況”にあったとしても、このような漏れなどが続くと、実態と看護必要度との乖離があるため、病棟における患者の重症度や看護必要度が正しく伝わりません。看護配置にも影響する指標の一つですので、日々の実態を反映することが重要です。

看護必要度は医療・看護の必要度の実態を反映するものです。正しく現場の評価を得るためにも、看護必要度は病院全体で協力し評価することが重要です。各職種が評価の目的を理解し、協力し合いましょう

1.看護必要度Ⅰの場合の注意点

 職種別に注意点の例を示します。これらの例を参考に、職場での日々の評価プロセスにおける反映漏れの発生する場面に注意しましょう。

【医師】
医師が一人で患者に実施した処置や検査は、必ず看護師に報告し記録に残しましょう。特に、外来や手術の前後(朝9時まで、もしくは17時以降)に患者に処置等実施した場合、勤務交代の時間帯でもあるため、看護師も把握しにくい時間帯です。注意しましょう!

【理学療法士】
体位ドレナージ、スクウィージングは、看護必要度の評価に関わる項目であることを理解し、実施した際は担当看護師へ一言声をかけましょう。看護必要度への反映漏れ防止となります。

【医事課】
看護必要度Ⅰの評価結果と、EFファイルとの結果が大きく乖離しているものがある場合に、看護部と協力しながら原因を究明しましょう。

2.看護必要度ⅠおよびⅡに共通する注意点

【看護師】
評価入力作業の簡略化のため、前日の評価を反映できるご施設もあると思いますが、修正漏れが発生することを念頭に置いて反映作業を実施しましょう。特に看護必要度は、自分が直接実施していない項目について、修正や反映が漏れやすい場合があります(例:ケア担当看護師による清潔ケアや搬送、休憩時間帯に発生した急な指示対応など)。

そのため、勤務の終わりには今一度、看護必要度の評価内容を見直しましょう。看護記録記載後に見直すと、反映漏れにも気づきやすくなります。

また、急な処置などのイベントがあった前後は、反映も削除も含めて修正が発生しやすいことを意識しておきましょう。リーダー看護師等に、看護必要度をダブルチェックしてもらうのもよいでしょう。

3.看護必要度Ⅱの場合の注意点

【医事課】
看護必要度Ⅱの場合は、オーダリングシステムやカルテシステム上の実施漏れが、大きく影響します。記録はあるが実施されていない項目は、看護部と常に情報共有し漏れが発生しないよう働きかけましょう。

令和2年度診療報酬改定に引き続き、令和4年度診療報酬改定においても看護必要度Ⅱの要件化が拡大されました。看護必要度ⅡはB項目を除いてレセプト電算処理システム用コードを用いた評価となりますが、DPCデータから見える看護必要度が、実際の看護業務量と乖離していないかということは、常に注意を払っておく必要があります。そのために、看護必要度Ⅱの導入後も看護必要度Ⅰでの評価を現場で継続している医療機関もあります。

4.おわりに

今回は看護必要度の精度向上についてご紹介しました。

今後は、地域の特性に応じた医療需要を見据え、病院機能の転換を図る医療機関が増えてくることが見込まれます。その際に看護必要度は医療需要を見極める際に参考になりますし、病院機能の転換によって入院料算定要件上の看護配置基準が変わる場合も、看護必要度を適正な看護配置のための指標の一つとして用いることができます。

そして、看護必要度の正確な評価は、看護の質を客観的に表す指標として活用することへ繋がります。

本コラムを病院全体での看護必要度の精度向上の取り組みに、ぜひご活用ください!

また、看護必要度ⅠとⅡの評価差異や、自院でのレセプト電算コードによる評価に不安のある場合は、ぜひ弊社にご相談ください!


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その他、重症度、医療・看護必要度の知りたい内容については、下記コラム1~7をぜひご覧ください。

コラム1:重症度、医療・看護必要度とは?
コラム2:重症度、医療・看護必要度は何のため?
コラム3:重症度、医療・看護必要度は何を評価する?
コラム4:重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡの違いは?
コラム5:重症度、医療・看護必要度はいつ評価する?
コラム6:重症度、医療・看護必要度は何点必要?何割必要?
コラム7:重症度、医療・看護必要度はどう変わってきた?