株式会社健康保険医療情報総合研究所

Planning, Review and Research Institute for Social insurance and Medical program (abbr. PRRISM)

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病院職員も知っておきたい調剤薬局経営のはなし(第2回/全3回)

COLUMN

2020.10.21

第2回 調剤薬局の仕事~薬局薬剤師に求められるもの~

今回は、かかりつけ機能や在宅業務など、近年薬剤師に求められている業務について述べます。これからの薬剤師には、第1回で述べた薬局業務をベースに、個々の患者へ向き合っていく対人業務の強化が重要視されています。また、病院と連携を取ることで、質の高い薬物治療を目指すことが求められています。

患者のニーズが多様化する中で、薬局薬剤師がどのように患者と関わっていく必要があるのかを解説いたします。

かかりつけ薬剤師・かかりつけ薬局

2015年10月に厚生労働省より「患者のための薬局ビジョン」が発表されました。医薬分業を推進していく中で、患者本位の医療の実現のために、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師の在り方を定めています。

かかりつけ薬剤師に求められる機能としては、以下の3点が挙げられます。

1点目は、「服薬情報の一元的・継続的な把握」です。

副作用や効果の継続的な確認、薬剤の重複を防止するために、かかりつけ薬剤師が服薬情報を一元管理し、その情報をもとに服薬指導を行うことが重要です。このため、かかりつけ薬剤師には患者に対する丁寧な聞き取り、一般用医薬品やお薬手帳の情報を含む患者の服薬情報の把握が必要であり、それに基づいて適切に服薬指導をすることが求められます。

2点目は、「24時間対応・在宅対応」です。

かかりつけ薬剤師に対しては、開局時間外でも、薬の副作用や飲み間違い、服用のタイミング等に関し随時電話相談ができます。夜間・休日も、在宅患者の症状悪化時などの場合には、調剤を行います。また、地域包括ケアの一環として、地域の医療機関や訪問看護ステーションと連携し、在宅対応に積極的に関与することが求められます。

3点目は、「医療機関等との連携」です。

医師の処方内容をチェックし、必要に応じ処方医に対して疑義照会や処方提案を実施することが求められます。また調剤後の患者の服薬状況や状態を把握し、必要に応じて医師にフィードバックします。このほかにOTC・健康食品に対する相談や地域住民の健康相談に応じ、必要時には適切な医療機関への受診勧奨を行います。地域の医療資源などを把握し、地域包括ケアの一翼を担うために多職種と連携体制を構築していることが求められます。

在宅医療への貢献

地域包括ケアにおいて、薬剤師の役割は重要です。特に団塊の世代が75歳以上となる2025年には、後期高齢者が人口の18%程度になると予想されています。患者が重度の要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができるよう、薬剤師による在宅患者への薬物治療へ参画することが求められています。

薬局薬剤師による在宅患者対応では、通常の調剤業務、患者宅訪問のほかに、患者の生活により踏み込んだ対応を行います。具体的には、お薬カレンダーなどを利用した服薬フォロー、在宅における患者の体調管理、また衛生状態の確認などを行います。時には医師の診察に同席し、薬学的知見から治療に対して意見する必要があります。

薬学的知見からのフォローの一つとして、患者の服薬困難への対応があります。医師の求めに応じて、胃ろうや腸ろうを行っている患者やその家族に対して、簡易懸濁法を用いた経管投与について指導することで、経管投薬支援料を算定することが可能です。

また、無菌調剤でオピオイドや高カロリー輸液の調製を行うため、無菌調剤室をもつ薬局も徐々に増えてきました。在宅患者やその家族のさまざまなニーズに対応できるよう、薬局機能も整備されつつあります。

病院との連携

薬局と医療機関が連携することは、患者の薬物治療・健康管理にとって重要です。患者の同意を得て薬局薬剤師から医師へ文書により情報提供すると、服薬情報提供料を算定することができます。特に通院までの患者の状態は医師にとって知りたい情報と考えられますので、薬局薬剤師はこの期間の患者の状況を確認し、医師へ報告・次回診察時の提案事項などを報告することで医師と患者の双方へ貢献します。

通院までの患者の状態管理について、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が改正され、令和2年9月より「薬剤師が、調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行う義務」が法制化されました。また、令和2年度の診療報酬改定でも、通院後の患者管理についての加算が追加されています。

1つ目が抗悪性腫瘍薬を注射されているがん患者のレジメンを把握し、服薬状況や副作用の状態管理を行う特定薬剤管理指導加算2です。

2つ目がインスリン等を使用している糖尿病患者に対して、調剤後に電話等で使用状況や副作用などを確認し、医師へ情報提供する調剤後薬剤管理指導加算です。

3つ目が吸入薬の使用に対する指導で、患者によっては在宅できちんと使えているか確認する必要のある吸入薬指導加算です。

複数の医療機関へかかっている患者も多いため、薬効成分の重複や相互作用など、ポリファーマシーの問題が生じることがあります。この問題を解消し、患者の治療継続のために、薬局薬剤師は薬剤変更や減薬を提案する必要があります。これまで、4週間以上内服している薬剤が6剤以上の場合、そのうち2剤の減薬を医師へ提案し、その結果減薬になった場合算定できる服用薬剤調整支援料1がありました。

令和2年度の診療報酬改定で、複数の保険医療機関より6種類以上の内服薬が処方されていた患者について、服薬情報を一元的に把握し、重複投薬等のおそれがある場合は、解消提案や服用薬剤一覧の文書を作成し、処方医へ送付した場合に服用薬剤調整支援料2が算定できるようになりました。これまで以上に薬局薬剤師がポリファーマシーに関わっていくことが求められています。

上記以外にも、オンライン服薬指導や、患者の適正な服薬を支援する外来服薬支援などが点数化されています。薬局薬剤師は患者来局後から通院までの薬剤の使用において責任を持ち、患者の体調管理や適正な服薬を支援することが重要な仕事となっています。その中で医療機関と連携し、情報を共有することで、より良い医療を提供できるよう、様々な取り組みを行っています。

調剤薬局は通院までの状態管理に強みがあります。医師と薬剤師で互いの強みを補完しあうことで、より効果的な医療を行うことができます。薬局の業務や役割を生かし、病院―薬局連携を改善・強化してみてはいかがでしょうか?

次回の最終回は、調剤薬局を経営面から解説します。調剤薬局における収益と費用の種類や、利益を生むための取り組みなどを、私の調剤薬局管理者としての経験を踏まえてお伝えいたします。