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株式会社健康保険医療情報総合研究所
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2022.11.25
第1回では、医師の働き方改革の大枠と時間外労働時間の上限規制について解説しました。その際、医師向けの時間外労働時間の上限規制には例外とさらにその特例の2種類があると述べました。月100時間(休日労働含む)・年間960時間(休日労働含む)が上限となる「A水準」と、月100時間(休日労働含む)・年間1860時間(休日労働含む)が上限となる「特例水準」です。今回は、それぞれの水準について詳しく説明します!
医師における時間外労働時間の上限には5つの水準(A水準+4つの特例水準(後述))が設けられていますが、36協定を締結した場合における時間外労働時間の上限は、すべての水準に共通して「月45時間、年360時間」であることを押さえておきましょう。それぞれの水準で違いがあるのは「臨時的な必要がある場合の時間外労働時間の上限」です。
まず、①診療従事勤務医に2024年度以降適用される水準(以下「A水準」)は、医療機関で診療に従事する勤務医に適用される原則的な水準です。医療機関に勤務するすべての医師がA水準であれば、特別な届出や準備は不要です。
次に、「特例水準」は以下の4つに分けられます。
②地域医療確保暫定特例水準(以下「B水準」)
③連携型地域医療確保暫定特例水準(以下「連携B水準」)
④集中的技能向上_研修水準(以下「C-1水準」)
⑤集中的技能向上_特定高度技能水準(以下「C-2水準」)
それぞれの水準について以下の3点をまとめたものが下表です。
● 臨時的な必要がある場合の時間外労働時間の上限
● 指定条件
● 医師労働時間短縮計画案の策定
水準 | 指定条件 | 時間外労働の制限 | 医師の時短計画の作成 |
---|---|---|---|
A水準 | 特になし。 所属する医師がすべてA水準であるならば、医療機関が指定を受ける手続き等は不要。 | 年間960時間 月100時間未満 | 不要 |
B水準 | ・三次救急医療機関 ・二次医療機関かつ年間救急車受け入れ1000台以上または年間の時間外入院500件以上 ・在宅医療を担う医療機関 ・専門的な治療を行う医療機関 といった、救急医療や居宅等における医療等を提供する医療機関 上記のため、やむなく時間外労働が年間960時間を超える医師が存在すること。 | 年間1860時間 月100時間未満 | 必要 |
連携B水準 | ・他の医療機関に医師の派遣を行うなどしている医療機関 ・自院おいての時間外労働の予定は年960時間以内であるが、上記の機能を果たすためやむなく他の医療機関での勤務と通算で予定される時間外労働が960時間を超える医師が存在すること。 | 年間1860時間 月100時間未満 | 必要 |
C-1水準 | 臨床研修プログラム、専門研修プログラム・カリキュラムの研修機関であること。 | 年間1860時間 月100時間未満 | 必要 |
C-2水準 | 医籍登録後の臨床従事6年目以降の者が、高度技能の育成が公益上必要な分野について、指定された医療機関で診療に従事する等医師の育成が可能であること。 | 年間1860時間 月100時間未満 | 必要 |
医師の働き方改革の推進に関する検討会 中間まとめより独自に作成
上表の通り、A水準以外の各水準である特例水準の指定を受けるためには医師労働時間短縮計画の作成・提出が必要となります。
ですので、まずは貴院に勤務する医師の労働時間の実態を把握し、「当院はどの水準を目指すのか?」の方針を決めることが大切です。
もし、A水準以外の指定を受ける予定があるのであれば、2024年4月以降の医師の労働時間短縮計画を作成し、各都道府県に指定申請をする必要があります。
下図のとおり、すでに「時短計画」の作成期間であり、医療機関勤務環境評価センターによる評価も始まっています(評価センターについては第4回でご紹介します)。
引用:令和3年度 第1回医療政策研修会及び地域医療構想アドバイザー会議
2024年4月までにA水準以外の指定手続きが完了していないと、年間960時間を超えて時間外労働ができなくなるので、早期に医師労働時間短縮計画案を提出できるよう準備を進めましょう。
注意点として、A水準以外の各水準は、指定を受けた医療機関に所属するすべての医師に適用されるのではなく、指定される事由となった業務に従事する医師にのみ適用されます。そのため、所属する医師に異なる水準を適用させるためには、医療機関はそれぞれの水準についての指定を受ける必要があります。
下図を例にすると、「B水準の業務に従事し、長時間労働が必要となる医師」が所属する××科と〇〇科はB水準の指定を受ける必要がありますし、すべての診療科に集中的な研修を必要とする臨床研修医が勤務するのであればC-1水準の指定も受ける必要がある、ということです。
引用:令和3年度 第1回医療政策研修会及び地域医療構想アドバイザー会議
今回は医師の時間外労働の上限規制における原則と特例水準について説明しました。この指定を受けるためには、医師の労働時間を調査したうえで、当院においては時間外労働がどの程度発生するのかあるのかを把握する必要があります。
つづいて、第3回では医師の労働時間の考え方について解説します!
連載コラム「医師の働き方改革」について考えよう!(全4回)~「医師の働き方改革」って何?~
第1回:「医師の働き方改革」の概要
第2回:時間外労働時間の「特例水準」について ←本コラム
第3回:医師の労働時間の考え方
第4回:「医師の労働時間短縮計画」について