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2022.11.25
改正労働基準法に基づき、2024年4月から「医師の働き方改革」として、勤務医にも時間外労働の罰則付き上限規制が適用となります。
「医師の働き方改革」とは一体どのようなものなのでしょうか?
病院はどのようなことをすれば良いのでしょうか?
今回は「医師の働き方改革」をテーマに、関連する制度の概要を起点として、病院に求められることまでを下記4回にわたってコラムをお届けします!
第1回:「医師の働き方改革」の概要 ←本コラム
第2回:時間外労働時間の「特例水準」について
第3回:医師の労働時間の考え方
第4回:「医師の労働時間短縮計画」について
「働き方改革」は、2018年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」に基づくものであり、2019年4月から順次施行されてきました。
「働き方改革」の目的は以下のように明示されています。
“労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講ずる。”
引用:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の概要
具体的には「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「働く人のニーズの多様化」などの社会的課題に対応していくために、自分で働き方を「選択」していくための取り組みです。
医師の勤務環境改善には長期的な見通しが必要となるため、2019年から5年間の猶予期間が与えられました。
また、医師の長時間労働の状況を鑑み、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保のために、2021年5月に「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が公布され、2024年4月から順次施行される予定となっています。
よって、2024年4月までに勤務環境を改善する「医師の働き方改革」に対応しなくてはなりません。
冒頭で「勤務医にも時間外労働の罰則付き上限規制が適用となる」と述べましたが、まずは時間外労働時間の上限規制の基本を解説します。
労働基準法32条においては、「1日8時間、週40時間(法定労働時間)を超えて労働させてはならない」と定められています。ただし、使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合、又は労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と協定(いわゆる36(サブロク)協定)を結び、労働基準監督署に届け出れば、法定労働時間を超えて労働させることができます。
しかし、36協定を締結すれば使用者は際限なく労働させることができるわけではありません。時間外労働時間の上限規制には、①原則、②例外、③医師向けの例外、④医師向けの例外の特例があります。上限規制は4種類あると押さえておきましょう。
まず、時間外労働時間の上限規制の原則は「時間外労働時間は、月45時間・年360時間を超えてはならない」というものです(①)。これは勤務医にも適用されます。
次に、例外として、時間外労働を行わせざるを得ない特別な事情がある場合には、特別条項付きの36協定を届出することで、月100時間(休日労働を含む)・年720時間(休日労働を含まない)が上限となります(②)。
医師の場合は、緊急手術が重なった等への対応を要する場合を想定し、上記の例外ではなく、さらに上の月100時間(休日労働含む)・年間960時間(休日労働含む)までという上限が適用されます(③)。これがいわゆる「A水準」と呼ばれるものです。
さらに、「地域医療提供体制の確保の観点から長時間労働にならざるを得ない場合が想定される」や「他の職業と同様の上限規制を適用することで、臨床研修医・専門研修中の医師が知識や技能を身に付けるための必要期間が長期化する恐れがある」といった背景を汲む形で、A水準を超える「特例水準」が設けられています(④)。特例水準の場合は、月100時間(休日労働含む)・年間1860時間(休日労働含む)が上限です。
上記をまとめたのが下表になります。
特例水準には、医師の労働時間短縮のための計画を都道府県に提出するなどの指定条件もあります。
本連載の第2回では、A水準及び特例水準の詳細と指定条件について解説します。
今回は「医師の働き方改革」を考えなければいけない背景である「働き方改革」の概要と、その中で医師が対象となる箇所について簡単に説明しました。2024年4月労働時間の上限規制の導入に備えて早期に準備を行い、「医師の働き方改革」の対応をしていきましょう。
連載コラム「医師の働き方改革」について考えよう!(全4回)~「医師の働き方改革」って何?~
第1回:「医師の働き方改革」の概要 ←本コラム
第2回:時間外労働時間の「特例水準」について
第3回:医師の労働時間の考え方
第4回:「医師の労働時間短縮計画」について