株式会社健康保険医療情報総合研究所

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「患者のための薬局ビジョン」をわかりやすく解説-「患者のための薬局ビジョン」と認定薬局の関係性とは?(第4回/全4回)

COLUMN

2023.11.20

第3回では、2024年度の調剤報酬改定がどのようになるか、筆者の予想を提示いたしました。

最終回となる第4回では、「患者のための薬局ビジョン(以下、本ビジョン)」と認定薬局・健康サポート薬局との関係性から、自薬局がどの認定薬局を目指すべきかを一緒に考えていきましょう。

なお、本コラムでは都道府県知事の認定が必要な2つの認定薬局と、都道府県知事に届出が必要な健康サポート薬局を併せて「認定薬局等」と表現します。

【認定薬局等とは?】

2021年8月より、都道府県知事が特定の機能を持つ薬局を認定する制度が始まりました。現在、厚生労働省が定める認定薬局は2つあります。

1つ目は「地域連携薬局」です。
これは、外来受診時だけではなく、在宅医療への対応や入退院時を含め、他の医療提供施設との服薬情報の一元的・継続的な情報連携に対応できる薬局が認定されます。地域の医療機関等と連携しながら、患者さんの療養をサポートすることが主な役割です。

2つ目は「専門医療機関連携薬局」です。
専門的な薬学管理が必要な利用者に対して、他の医療提供施設との密な連携を行いつつ、より高度な薬学管理や、高い専門性が求められる特殊な調剤に対応できる薬局が認定されます。そのため、高度な専門性をもった薬剤師の配置が必要です。本コラム執筆時点(2023年10月31日)では、がん治療に対しての認定があります。

また上記以外に、厚生労働大臣が定める健康サポート機能に関する基準を満たしたうえで、都道府県知事に届出をすることで認定される「健康サポート薬局」もあります。かかりつけ機能を有した薬局が、未病や予防の段階を含めてOTC相談や受診勧奨等により患者さんの健康をサポートする役割を担います。

【患者のための薬局ビジョンと認定薬局との関係性は?】

以下の図は、認定薬局等が本ビジョンのどこに該当するかを示しています。

厚生労働省資料をもとに筆者作成

本ビジョンの根幹となる「かかりつけ薬剤師・薬局」の機能を有していることを示す認定薬局が、地域連携薬局です。
かかりつけ薬局機能を一定以上持ったうえで「健康サポート機能」を有する場合に認定される薬局が、健康サポート薬局です。
がん対応に関する「高度薬学管理機能」を有する薬局として認定されるのが、専門医療機関連携薬局です。

【自分の薬局はどの認定を目指せばいいか?】

では、自分が所属している薬局はどの認定を目指せばいいのでしょうか。条件の満たしやすさから考えてみましょう。

まず、最も満たしやすいと考えられるのは、健康サポート薬局です。
認定のハードルとしては、健康サポート薬局に係る研修を受けた薬剤師の配置が挙げられます。研修自体は日本薬剤師会を始め、様々な機関で実施されていますので、実務経験が十分にある薬剤師の方は受講を検討してみてはいかがでしょうか。

次に満たしやすいのは、地域連携薬局です。
人員配置要件として、「地域包括ケアシステムに関する研修」がありますが、これは健康サポート薬局に係る研修に含まれます。最も大きなハードルとなるのが、薬局の機能と設備の要件です。

機能としては、「地域における医療機関に勤務する薬剤師に対する報告及び連絡」が挙げられ、月平均30回以上の報告及び連絡が実績要件となります。

設備としては、「無菌製剤処理を実施できる体制」が挙げられます。隣にクリーンベンチ等を有する薬局がない場合は、“当面の間、適切な実施薬局を紹介するという対応でも差し支えない”とされています。ただ、「当面の間」とあるように、いずれ自店舗または近隣で設置する必要性が出ると考えられますので、将来を見据えて設備投資を検討してはいかがでしょうか。

専門医療機関連携薬局は、最もハードルが高いと考えられます。その理由としては、2点あります。

1つ目は、高度な専門性をもった薬剤師の配置です。
現在、認定のあるがん領域で言うと、「地域薬学ケア専門薬剤師(がん)」または「外来がん治療専門薬剤師」の配置が必要です。認定取得には病院での実務研修等が必要となりますので、目指す場合は店舗や会社のサポートも必要です。

2つ目は、薬局内の構造設備です。
個室その他のプライバシーの確保に配慮した設備」が要件化されており、待合室に個別ブースを設けるなど、プライバシーに配慮したスペースを設置可能か検討する必要があります。

なお、現在の対象領域はがんだけですが、今後、他の領域にも広がる可能性があります。HIVや緩和ケアなど、専門性が重要な領域に関しては、認定薬剤師の取得も検討してみましょう!

【おわりに】

認定薬局のメリットとして、薬局の機能を対外的にアピールできる点があげられます。そのため、患者さんが薬局を選ぶ場合の参考にもなります。また、医療機関と連携する際の安心感や期待感にもつながります。

さらに、認定を目指す過程で「薬局の体制や設備の整備」、「薬剤師の確保およびスキルアップ」にもつながりますので、ぜひ薬局の状況に適した認定を目指しましょう!

令和6年度調剤報酬改定についても、本ビジョンをベースとした薬剤師業務の見直しが予想されます。
改定にスムーズに対応するためには、中医協の動向を注視して、余裕を持って準備をしておくことが大事です。
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