株式会社健康保険医療情報総合研究所

Planning, Review and Research Institute for Social insurance and Medical program (abbr. PRRISM)

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コラム

ゼロから始めるDPCデータ活用②

COLUMN

2020.11.11

第2回 様式1ファイルを使いこなす

1.様式1ファイルを使った集計の事例

第1回では、様式1ファイルとは「DPC版の簡易カルテ情報」であるとご紹介しました。様式1は患者の属性情報、入退院経路、病名、手術、診療情報の大きく5分野に分かれており、JCS[1] 、ADL、疾患分野ごとの重症度などの多岐にわたる詳細項目が存在しています。他のDPCデータと紐づけた集計はもちろん、様式1のみの集計だけでも様々な統計や分析を行うことができます。


[1] Japan Coma Scaleの略で、意識障害の深度分類を指します。

集計事例1.疾病統計
集計事例2.手術統計
集計事例3.入院経路別患者数
2.様式1ファイルの読み解き方

様式1を活用していく上でデータの構造を理解することが重要です。初めてデータをご覧になる方にとっては難しく感じられるかと思いますが、基本的な読み解き方さえ把握すれば理解しやすくなりますので一緒に確認していきましょう。まずは様式1がどのようなものなのかを見てみます。

まず、様式1は縦持ちと言われるデータの構造をしており、1つの様式1で何行にもデータが分かれています。ペイロードとある列がデータの本体にあたり、ペイロードがどのような情報を表しているかはコードの列にある情報で決定されます。

例えば上図の場合、コードがA000020(ペイロード種別:入院情報)であればペイロード1は入院年月日、ペイロード2は入院経路を表します。 各コードとペイロードとの対応表はDPC調査事務局のHPからダウンロードできる「DPC導入の影響評価に係る調査」実施説明資料に記載がありますのでそちらで内容が確認できます。

様式1のデータでは男性を「1」、女性を「2」とするような、数値で表現されている情報も数多く存在しますので、上記資料と様式1のデータをあわせて見ることでデータの意味合いが見えてきます。

3.様式1ファイルを使って疾病統計を作ってみましょう!

様式1を使った活用例として診療録管理体制加算の施設基準にもなっており、各医療機関でもニーズの高い疾病統計を取りあげます。今回は主傷病の数をICD10別に集計する形で疾病統計を作ってみましょう。Excel®を使った集計手順は下図の通りです。

図のSTEP3とSTEP4の作業内容について説明をします。
STEP3では統計に必要な項目を設定しています。はじめに青枠内の「ピボットテーブルのフィールドリスト」で使用したい項目にチェックを入れ目的に応じてレポートフィルタや行ラベル、列ラベル、値にドラッグ&ドロップで項目を振り分けます。

次に「レポートフィルタ」に条件指定をする項目となる「統括診療情報番号」、「コード」を配置します。「行ラベル」には「主傷病ICD10コード」を示す「ペイロード2」と「主傷病名」を示す「ペイロード9」を配置し、最後にそれぞれの主傷病ICD10コードや主傷病名が何件存在するのかを集計するため、「値」に「データ識別番号」を配置します。

STEP4では集計の対象を設定しています。今回は「統括診療情報番号」を「0」に、「コード」には主傷病の集計がしたいので主傷病のペイロードコードである「A006010」を指定します。 これで主傷病ICD10コードおよび主傷病名別に分類された疾病統計の完成です。

4.おわりに

今回は主に様式1に焦点をあてた分析例を紹介しました。疾病統計は診療録管理体制加算の施設基準としても作成が求められるため、実務においても重要な統計情報となります。病歴管理システム等が無くシステムから疾病統計を作成できない施設様でも様式1を活用して頂くことで簡単に疾病統計の作成が可能となりますので、院内の作業軽減に是非役立ててください。

次回の

第3回は、請求情報にあたるEFファイルというデータを使い、経営に寄与するような集計について、実例を交えながら解説します。

(産労総合研究所「病院羅針盤」掲載)

DPCデータ活用に初めて取り組まれる方は、DPCデータをExcelで扱いやすい形に変換するツール「DPC Bakery」のご利用をおすすめします。

DPC Bakeryを使えば、今回ご紹介したDPCデータをそのまま扱う手法よりも、簡単に、早く、正確に、疾病統計などの各種統計資料が作成できます!