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株式会社健康保険医療情報総合研究所
Planning, Review and Research Institute for Social insurance and Medical program (abbr. PRRISM)
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2020.11.18
本連載の第1回で、EFファイルとは「出来高レセプト情報」であり、入院ファイルと外来ファイルがあるとご紹介しました。今回は入院ファイルを中心に解説していきますので、本文中のEFファイルは、特に断りが無い場合は入院ファイルを指します。
EFファイルは月ごとに医事会計システムから出力されます。医科保険分のみを対象に当該月内で入院中の患者に何日にどのような診療を行い何点請求したのか、およびそれに伴い実施された手技(加算を含む)、使用した薬剤や特定保険医療材料(以下、診療材料)等の実績データが含まれています。
EFファイルを活用することで医科保険に関する収益分析や、指導料や加算の算定回数、使用した薬剤や診療材料の分析を行うことができます(上表)。
また、第2回で紹介した様式1と組み合わせることで、診療科別、疾患別、入院経路や予定・救急別などの切り口で診療プロセスを分析することも可能となります。
EFファイルを活用するにあたっては、そのファイル構造と項目を理解することが重要です。EFファイルはEファイル(診療明細情報)とFファイル(行為明細情報)の2つを統合した構造となっています。この点をまず理解しましょう。以下の図を例に説明します。
行為明細番号「000」と「001」の行を見てください。「心臓カテーテル法による諸検査 左心カテーテル」が2行になっているため、不思議に思われるかもしれませんが、行為明細番号が「000」の行がEファイルに相当し、「001」以降がFファイルに相当しますので、このように2行となっているのです。
「000」のEファイルの行から、この「心臓カテーテル法による諸検査 左心カテーテル」についての請求点数(行為点数)が7,492点、その内訳として薬剤(行為薬剤料)が1,105点、同じく診療材料(行為材料料)が987点であることが確認できます。
一方、「心臓カテーテル法による諸検査 左心カテーテル」として実施された加算を含む手技、使用された薬剤や診療材料は、「001」以降のFファイルの行で確認することができます(ただし医科保険で算定したものに限ります)。
また、Fファイルのみが持つ情報として、「行為明細区分情報」があります。この情報によって、その行が「退院時処方」や「特定入院料等に包括される診療行為」に関する情報なのかを判断します。
その他、EFファイルの項目や詳細な説明は別途「DPC導入の影響評価に係る調査」実施説明資料(以下、調査実施説明資料)をご確認ください。
EFファイルを使った診療科別の入院稼働額(単位:円)は以下の手順で集計します。
図表3の作業内容について説明をします。
まずSTEP1でテキストデータのEFファイルをExcel®に取り込みます。
STEP2で取り込んだデータの形式を適切なものに変更します。まずは全列を「文字列」に設定しますが、今回は診療科別の入院稼働額を集計しますので行為点数などは「G/標準」に設定しましょう。
次にSTEP3では「行為点数」をもとに数式を使って「請求金額」を計算します。EFファイルには「円点区分」という項目があり、「0」の場合は点、「1」の場合は円で「行為点数」の数値の単位を表します。if関数を使って「円点区分」が「0」の場合に10をかけます。
また、一日に複数回行う診療行為などを考慮し、行為点数に行為回数をかけます。数式の入力を完了し結果が反映されたら、コピーして最終行まで貼り付けを行います。
STEP4で指定範囲を確認し、新規ワークシートにピボットテーブルを挿入しましょう。
STEP5では挿入したピボットテーブルを用いて集計を行います。「ピボットテーブルのフィールドリスト」を図表のように設定します。Σ値のSTEP3で入力した「請求金額」が合計となっているか確認しましょう。
STEP6で「行為明細番号」を「000」に絞り込みます、医科保険の入院稼働額を集計する際には食事料を含まないことが多いので、今回は「データ区分」から「食事」に該当する「97」を除くようにしましょう。集計結果を別のワークシートにコピーして貼り付け、列の見出し名を変える、罫線を引く等を行い、表を見やすく調整しましょう。
EFファイル活用にあたって、コツと留意すべき点を以下に挙げます。
①マスタの用意
今回の集計結果は診療科区分(=コード)で集計を行いました。しかし、院内で集計結果を活用する際には、具体的な診療科名に直す方が良いでしょう。このコードと具体的な診療科の名称との対応付けを行うために使うのがマスタです。
EFファイルをはじめとしたDPCデータはコード化された情報が多いので、マスタを用いることで、データの可読性を高めて活用がしやすくなります。なお、マスタ作成は調査実施説明資料[1]を参考に行いましょう。
例えば、診療科区分が060は「消化器科」、070は「循環器科」ですが、院内の名称と異なる場合は適宜修正しましょう。また、データ区分について21は「内服」、22は「屯服」ですが、集計の目的上それらの区分が不要であれば20番台はまとめて「投薬」、同じく30番台は「注射」とする等も手です。
②データ精度の向上
第1回でも触れましたが、データ精度の高さはデータ分析および活用を行うにあたっての大前提となります。先述した行為明細区分情報に関わる退院時処方や特定入院料に包括される診療行為は、入力誤りや抜け漏れが発生しやすい箇所です。EFファイルが請求情報をもとにした診療実態のデータであり、今後の病院経営を行う上で重要な情報資産であることをDPCデータ作成担当者だけでなく、院内全体でまずは認知・共有することが大切です。
[1] 2020年度の調査実施説明資料(2020年3月30日版)では診療科区分はP.183、データ区分はP.161に記載があります。
今回はEFファイルについての説明と入院収益面からの活用例を紹介しました。
また、平成30年度の診療報酬改定では「重症度、医療・看護必要度(以下、必要度)」のA項目とC項目について「レセプト電算処理システム用コードを用いた評価」としてEFファイルによる評価である必要度(Ⅱ)が設けられました。
令和2年度改定では必要度(Ⅰ)においてもA項目の一部とC項目はEFファイルを用いて評価することになり、病院にとってEFファイルの重要性は増しています。
まずはいろいろ試してみるという気持ちで是非EFファイルに触れてみてください。 次回は、DPCデータを活用して、必要度の基準を満たす患者の割合の向上策についてご紹介する予定です。
(産労総合研究所「病院羅針盤」掲載)
DPCデータ活用に初めて取り組まれる方は、DPCデータをExcelで扱いやすい形に変換するツール「DPC Bakery」のご利用をおすすめします。
EFファイルはサイズが大きいため、今回ご紹介した方法では、複数月の集計や分析が困難です。DPC Bakeryは、DPCデータを分析に必要な最小限のデータに変換してくれますので、複数月分の集計をExcelのみで完結できます!