株式会社健康保険医療情報総合研究所

Planning, Review and Research Institute for Social insurance and Medical program (abbr. PRRISM)

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コラム

ゼロから始めるDPCデータ活用④

COLUMN

2020.11.25

第4回 DPCデータを活用した「重症度、医療・看護必要度」の評価チェック

1.「重症度、医療・看護必要度」を知る

「重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)」の評価は人の手で入力する部分があるため入力し忘れ等が起きえます。今回は看護必要度のデータにあたるHファイルと、これまでご紹介させて頂いた様式1EF入院ファイルを使用して看護必要度を見直す方法等をご紹介いたします。

なお、本コラムでご紹介する看護必要度の分析は評価入力の入力忘れ等の発見や評価の傾向を発見するためのアプローチであり、評価すべき診療行為が無いなどの本来評価をすべきでない評価日まで評価を付与することを促すものではありません。

①看護必要度の基準を満たしやすい患者を把握する(手術症例など)

疾患や手術などの組み合わせによって、看護必要度の基準を満たしやすい患者群とそうではない患者群が存在します。

院内の疾患構成の把握と共にどのような患者が看護必要度の基準を満たしやすいかをデータの分析によって把握し、受け入れ体制を充実させるというアプローチがあります。

②在院日数短縮による効果を知る

「看護必要度」は在院日数が長期化するにつれて、基準を満たさなくなる傾向があります。

この性質を踏まえ、早期退院が可能である症例については在院日数を短縮することで「看護必要度」への影響度を分析することができます。

③評価モレ、評価誤りが起きていないかの見直し

 「看護必要度」も電子カルテや看護システムに人の手で入力する関係上、入力モレや入力誤りによる評価間違いが発生する可能性があります。また、評価に対する考え方や認知などによっても担当者によって評価状況にばらつきが発生しえます。

入力漏れを確認する
看護必要度Ⅰと看護必要度Ⅱを比較して漏れを探す
病棟ごと・評価項目ごとに見ると問題点が見つかりやすい

評価に間違いが起きていないかのチェックには、連日評価がされる傾向にある項目にブランクがあったときに、評価入力忘れではないか確認をする見直しのアプローチや、看護必要度Ⅱ(EF入院ファイルからA項目・C項目の評価を算出したもの)と看護必要度Ⅰ(看護師がAからC項目までの全ての項目を評価したもの)の評価状況の差異から、間違いの可能性を検証するアプローチがあります。

看護必要度Ⅰと看護必要度Ⅱで必ずしも評価が一致するわけではありませんが、看護必要度Ⅰに評価があり、看護必要度Ⅱに評価がない場合はEF入院ファイルに診療行為の登録モレが発生している可能性があります。

看護必要度Ⅰと看護必要度Ⅱに不一致が出ている割合が高い場合はEF入院ファイルへの登録モレ、反対のケースにおいては看護師側の評価モレが起きていないかを検証し、モレがあれば修正します。

2.Hファイルの構造を理解しましょう

「看護必要度」の分析をするためにはまずHファイルの中身を把握することから始まります。Hファイルとは「看護必要度」の情報にあたるDPCデータのことを指します。

Hファイルは以前ご紹介した様式1と同じく、コードにある値によってペイロードが示す情報が決定される以下の上図のような構造となっています。

3.分析のための下準備をする

Hファイルを以下の手順で集計用に加工します。

STEP1では、同一患者、同一評価日の情報をまとめ、データを一行にして整理します。Hファイルの形式のままだと情報が読みにくいので、看護必要度の評価を確認する際にはデータの整理が必要です。

STEP2では、コードをもとにあらかじめ各ペイロードの得点を計算します。計算が終わったら、行ごとの得点合計も集計しましょう。なお、コードの中に「TAR0010」というコードがありますが、これは判定対象といって0以外は看護必要度の計算対象外とする評価日を示しています。

後ほど、計算対象外として除外する際に使用するので、得点合計にはペイロード1と同じ値が来るように処理をしておきます。Hファイル上では看護必要度で2点の項目であっても0か1で表現されているなど、そのまま看護必要度の点数を集計するには不向きなので、わかりやすくしておきましょう。

STEP3では、データ識別番号と入院年月日、実施年月日を結合して集計用のKEYを作成し、ピボットテーブルを挿入します。ピボットテーブルで行側に「KEY」、「データ識別番号」、「入院年月日」、「実施年月日」、「病棟コード」、列側に「コード」、値に「得点合計」を合計値にして計算結果を別シートに貼り付けます。

STEP4では、最後に計算対象外の評価日を消すため、「TAR0010」の値が0以外の評価日は削除します。今後の加工のために経過日と看護必要度の基準超えのフラグをつけましょう。 次回にはこの計算結果に様式1から病名を結合して、看護必要度分析のための加工方法に触れてまいりますので今回はここまでをマスターしましょう!

4.おわりに

弊社でも2020年度の診療報酬改定を受けて、急性期一般入院料を算定する医療機関様を中心に多くの医療機関様から「看護必要度」に関するお問合せを頂いております。

ご紹介しました「看護必要度」の精度向上に向けた分析や取組みは弊社コンサルティンググループが実際に医療機関様の看護部様にもご協力を頂き、取り組んでいる事例となっております。お読み頂いた皆様にも是非院内で有効にご活用頂けることを願っております。紙面の都合上、今回は下準備までですが次回にはこの後の加工方法についても触れてまいりますので引き続きご覧いただければ幸いです。

(産労総合研究所「病院羅針盤」掲載)

DPCデータ活用に初めて取り組まれる方は、DPCデータをExcelで扱いやすい形に変換するツール「DPC Bakery」のご利用をおすすめします。

Hファイルを扱う場合は、ペイロードという概念を理解しなければならないため、データ分析に慣れていない方は、取り組みづらい印象を持たれるかもしれません。

DPC Bakeryは、ペイロードの考え方やHファイルの構造を理解しなくても、看護必要度分析が行える形に変換してくれます。自院データを使ったデモも実施していますので、お気軽にお問い合わせください。