株式会社健康保険医療情報総合研究所

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「患者のための薬局ビジョン」をわかりやすく解説-患者のための薬局ビジョンとは何か?(第1回/全4回)

COLUMN

2023.11.13

2015年に厚生労働省から発表された「患者のための薬局ビジョン」(以下「本ビジョン」)は、調剤薬局にとって、薬局・薬剤師の在り方や経営を考えるうえで非常に重要です。

本コラム執筆時点では、2024年度調剤報酬改定が議論されています。これまでの改定では本ビジョンで示された内容が改定内容に反映されてきましたので、2024年度調剤報酬改定にも影響があると考えられます。

では、本ビジョンの内容のうち、どこに着目すれば、薬局や薬剤師が取るべきアクションが見えてくるのでしょうか?薬局の管理薬剤師経験のある筆者と一緒に考えていきましょう!

本連載は全4回で構成されています。
第1回では、本ビジョンには何が書いてあるのかを確認します。
第2回では、本ビジョンが過去、どのように調剤報酬に影響を与えて来たのかを振り返ります。
第3回では、2024年度調剤報酬改定が、どのような方向性で進むのかを筆者が予想します。
第4回では、本ビジョンと「認定薬局」にどのような関係があるのかを確認し、自薬局がどの認定薬局を目指すべきかを見ていきます。

患者のための薬局ビジョンとは何か?

「患者のための薬局ビジョン」とは何かをおさらいするにあたり、まずは本ビジョンの策定の経緯を見てみましょう。

医薬分業により、薬局薬剤師は専門性を発揮し、薬物療法の安全性・有効性の向上やそれに伴う医療保険財政の効率化に寄与してきました。一方で、内閣府の規制改革会議(当時)にて、薬局の役割が十分に発揮されていないとする指摘もありました。

そこで、厚生労働省は、患者本位の医薬分業の実現に向けて、 かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を明らかにするとともに、中長期的視野に立って現在の薬局をかかりつけ薬局に再編する道筋を提示するものとして、本ビジョンを2015年に策定しました。

患者のための薬局ビジョンの3つの柱

本ビジョンでは、薬局や薬剤師に対して具体的に何が求められているのでしょうか。ビジョン全体に共通する考え方は3つあります。

1つ目は「立地から機能へ」です。
病院やクリニックの門前に依存する状況から脱却し、患者さんや地域住民のために薬剤師の専門性を発揮することが求められています。

2つ目は「対物業務から対人業務へ」です。
これまで調剤(薬剤の取り揃え)が薬剤師の中心業務でしたが、これからは専門性やコミュニケーションを通じて患者さんや地域住民へ積極的に関わっていくことが求められます。

3つ目は「バラバラから一つへ」です。
服薬に関する情報の一元管理を行うことで、安全・安心な薬物治療を実施することが求められます。また、医療機関や地域の他職種との連携も積極的に行い、地域包括ケアシステムの一翼を担う存在になることも求められています。

具体的にどのような機能が求められているのか

以下の図は、本ビジョン全体に共通する考え方を踏まえ、具体的に求められる3つの機能をまとめたものです。

厚生労働省資料をもとに筆者作成

1つ目の機能は、「かかりつけ薬剤師・薬局」です。
かかりつけ機能は、本ビジョンの最も大事な考え方であり、服薬に関する情報の一元管理と、それに基づく薬学的管理・指導が求められます。また、24時間対応や在宅医療の対応、医療機関と連携し情報共有等を行う機能も求められます。

2つ目の機能は「健康サポート薬局機能」です。
かかりつけ機能を踏まえ、病気の予防や、OTC医薬品の提供等による健康サポートが求められます。

3つ目の機能は「高度薬学管理機能」です。
かかりつけ機能を踏まえ、抗がん剤や抗HIV薬等、高度な薬学的管理が必要とされる分野に対し、専門医療機関と連携しながら患者の薬物治療に関わっていく役割が求められます。

なお、厚生労働省は、本ビジョンの中で、2025年までにすべての薬局を 「かかりつけ薬局」にすることを目標に掲げています。まだ対応できていない薬局や薬剤師は、まずは服薬情報の一元管理や在宅患者の獲得などからスタートしてみましょう!

おわりに

本ビジョンを改めて見直してみると、「かかりつけ」や「在宅」、「医療機関と連携」など、現在の薬局や薬剤師業務における重要なキーワードがたくさん出てきたことがわかります。
では、本ビジョンで示された狙いが、どのように調剤報酬改定へ影響を与えて来たのか?その点を第2回のコラムで確認します!

令和6年度調剤報酬改定についても、本ビジョンをベースとした薬剤師業務の見直しが予想されます。
改定にスムーズに対応するためには、中医協の動向を注視して、余裕を持って準備をしておくことが大事です。
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