株式会社健康保険医療情報総合研究所

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重症度、医療・看護必要度は何のため?(第2回/全8回)

COLUMN

2022.01.24

「評価するのが決まりだから。」
このような感覚で、重症度、医療・看護必要度を評価している方はいませんか?

皆さんが実施している、重症度、医療・看護必要度の評価は一体何のために行っているのでしょうか?

普段何気なく実施していることかもしれませんが、今回のコラムは、その評価が何に役立っているのかについてご紹介します。

1.重症度、医療・看護必要度の歴史

1-1.重症度、医療・看護必要度の始まり

重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)の始まりは平成20年度の診療報酬改定です。当初は適切な看護人員配置のエビデンスとして示すための指標とされましたが、診療報酬改定のたびに見直しがされ、病床の機能分化をはかるという新たな目的も示されています。

1-2.重症度、医療・看護必要度の変化

これまでの看護必要度の変化を簡単に時系列でご紹介します。

平成20年度「一般病棟7対1入院基本料」の算定要件として「一般病棟用の重症度・看護必要度」が導入される。
平成22年度「一般病棟7対1入院基本料」のほかに、「一般病棟10対1入院基本料」においても一般病棟用の重症度・看護必要度の評価の加算が適用される。
平成24年度「一般病棟7対1入院基本料」の算定要件が厳格化され、「一般病棟10対1入院基本料」「一般病棟必要度評価加算(13対1)」の算定要件にも重症度、看護必要度の測定が導入される。
平成26年度A項目が急性期患者の特性を評価する項目となり、名称が「重症度、医療・看護必要度」へと変更される。
平成28年度新たにC項目が追加され、急性期に密度の高い医療を必要とする状態が適切に評価されるよう内容の見直しがされる。
平成30年度認知症やせん妄状態の患者に対する評価基準が追加され、A・C項目については診療実績データを用いる重症度、医療看護必要度Ⅱが導入される。
令和2年度B項目について、「患者の状態」と「介助の実施」に分けた評価が導入される。重症度、医療・看護必要度Ⅱの要件化がされる。

平成20年度に導入されて以来、診療報酬改定のたびに項目や評価基準の内容の見直しがされています。 なお、平成26年度に名称が「重症度、医療・看護必要度」に変更された際のA項目の変化は下記の通りです。

血圧測定や尿測定等、入院患者であれば誰でも行うような項目は削除され、急性期患者に特化した項目のみになりました。

詳細の評価内容や、ⅠとⅡの違いについては、後日別コラムで紹介します。

コラム3:重症度、医療・看護必要度は何を評価する?
コラム4:重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡの違いは?

2.急性期医療と重症度、医療・看護必要度 ~機能分化に向けた仕組みとして~

看護必要度の目的として「病床の機能分化」があると冒頭に記載しましたが、機能分化が一体なぜ必要なのでしょうか?

入院医療の評価の基本的な考え方として、「個々の患者の状態に応じて、適切に医療資源が投入され、より効果的・効率的に質の高い入院医療が提供されることが望ましい」、とされています。

なぜならば、患者の状態や医療内容に応じた医療資源の投入、すなわち機能分化がなされないと、非効率な医療となるおそれや、粗診粗療となるおそれがあるからです。

看護必要度は、非効率や粗診粗療を避けつつ、手厚い看護や医療資源投入が必要な患者に適切に医療がいきわたり、そのような患者を受け入れている医療機関に対して適切に診療報酬を分配するための“ものさし”としての役割を担っています。

そのため、一般病棟での受け入れが求められる診療報酬で考慮すべき「急性期の入院患者」を把握する評価手法として看護必要度は常に適切でなければいけないのです。

「急性期の入院患者」を把握する評価手法として適切であるために、診療報酬改定のたびに実態の分析やシミュレーション等をもとに多くのステークホルダーを交えて議論が積み重ねられ、評価方法や基準の見直しがなされてきました。

このように看護必要度は、入院患者に提供されるべき看護の必要量を把握し適切な看護配置のエビデンスとなり、さらに急性期の入院患者を把握してその病床機能を評価するためにも重要な手段なのです。

今回は、看護必要度は何のために評価していて何に役立っているのかについてご紹介しました。評価する意義を理解すると、「決まりだから」といた気持ちにとらわれず評価ができるかもしれません。


参考文献:
日本看護協会出版「看護必要度 第8版」
医療文化社「『看護必要度』の研究と応用 新しい看護管理システムのために」




その他、重症度、医療・看護必要度の知りたい内容については、下記コラム(全8回)をぜひご覧ください。

コラム1:重症度、医療・看護必要度とは?
コラム2:重症度、医療・看護必要度は何のため? ※当ページ
コラム3:重症度、医療・看護必要度は何を評価する?
コラム4:重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡの違いは?
コラム5:重症度、医療・看護必要度はいつ評価する?
コラム6:重症度、医療・看護必要度は何点必要?何割必要?
コラム7:重症度、医療・看護必要度はどう変わってきた?
コラム8:病院全体で取り組む重症度、医療・看護必要度の精度向上