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重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡの違いは?【令和6年度版】(第4回/全8回)

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2024.04.12

令和6年度診療報酬改定で要件化が拡大した重症度、医療・看護必要度Ⅱについて、今後自院も対象となった場合に対応できるのか、それまでにどのような準備や対策があるのかを知りたいというご要望を多くいただきます。

本コラムでは重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡとはそもそもどのようなものかというところから、全国の医療機関ではどのような対策をしているのかまでご紹介します。院内でのご検討にお役立てください!

1.重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡとは?

重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡ(以下、看護必要度Ⅰ、Ⅱ)とは重症度、医療・看護必要度における評価方式の類型を指します。

看護必要度ⅠはA項目の注射薬剤3種類以上の管理、専門的な治療・処置のうち薬剤を使用するものおよびC項目について、レセプト電算処理システム用コードを用いた評価を行い、それ以外については各項目の評価基準に基づいて院内研修を受けた看護師等が評価をする方式です。

看護必要度ⅡはB項目を除いたA項目、C項目のすべてについてレセプト電算処理コードを用いて評価する方式となっています。

2つの評価方式の違いは看護必要度ⅠではA項目の一部を、看護必要度ⅡではA項目の全部についてレセプト電算処理システム用コードを用いて評価している点にあります。

なお、令和2年度診療報酬改定より前は看護必要度Ⅰの評価項目はすべて院内研修を受けた看護師等が評価を行う仕組みとなっていました。前々回(令和2年度)改定以降、看護必要度Ⅰにおいても一部はレセプト電算処理システム用コードを用いて評価することになっています。

図4-1:評価方式別の評価方法のイメージ

図4-2:看護必要度ⅠにおけるA項目内レセプト電算処理コード評価部分

2.看護必要度ⅠとⅡどちらを使ってもよいのか?

令和6年度診療報酬改定では次の類型について看護必要度Ⅱを用いることが要件となっています。

急性期一般入院料1を算定する病棟(許可病床数が200 床未満の保険医療機関であって、重症度、医療・看護必要度Ⅱを用いた評価を行うことが困難であることに正当な理由がある場合を除く。)、許可病床数200 床以上の保険医療機関であって急性期一般入院料2又は3を算定する病棟、許可病床数400 床以上の保険医療機関であって急性期一般入院料4又は5を算定する病棟及び7対1入院基本料(特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。))

これらに該当する場合は看護必要度Ⅱを用いた評価を行う必要があります。

当てはまらない場合はどちらを用いても構いませんが、評価方式を切り替える際には地方厚生(支)局に届出が必要となります。

3.評価に違いは出る?どちらがクリアしやすい?

急性期一般入院料1を例にとると、看護必要度を満たす患者の割合の基準は、看護必要度Ⅰでは①「A項目3点以上 または C項目1点以上」に該当する患者の割合が21%、かつ②「A項目2点以上 または C項目1点以上」
に該当する患者の割合が28%。看護必要度Ⅱでは①「A項目3点以上 または C項目1点以上」に該当する患者の割合が20%、かつ②「A項目2点以上 または C項目1点以上」に該当する患者の割合が27%となっています。
「どちらがクリアしやすい(基準を満たしやすい)ですか」と質問を受けることがありますが、これらの基準については厚生労働省のシミュレーション結果を基に設計された数値であり、基準値の低い看護必要度Ⅱの方がクリアしやすいと一概には言えません定義や算定ルール等の違いからから評価の違いは出てきます。またどちらが簡単ということもありません。定義の違い等については、評価方式の切替えを検討する時には注意が必要です。

4.そもそもレセプト電算処理システム用コードを用いた評価とは?

院内の診療行為に基づいて請求を行う際に項目ごとに付与されているコードのことを「レセプト電算処理システム用コード」と言います。

看護必要度の項目ごとにどの診療行為が評価対象となるかのリスト(以下、評価対象リスト)が厚生労働省から公開されています。リスト内の項目に該当する項目がレセプト上に記載があれば評価することができます。

ただし、薬剤についてはデータ区分コードが20番台(投薬)、30番台(注射)、50番(手術)、54番(麻酔)に登録されている場合にのみの評価となっておりますのでご注意ください。

〇 レセプト電算処理システム用コードからの評価イメージ

評価の方法ですが、通常、DPCデータの1つであるEF統合ファイルを用いてこれらの評価を割り出します。EF統合ファイルは1か月分でも数万から数十万行と膨大なデータとなります。評価対象リストに挙げられているコードも3千強あるため、作業負荷、安全面の両面から外部調達したシステム等を用いての評価が現実的です。

5.看護必要度Ⅱに移行したほうが良い?

移行した方がよいかの判断の前に、まず看護必要度をめぐる政策の流れを見てみましょう。

これまでの政策動向を見ると、看護必要度Ⅱへの移行は今後も更に推進されてくることが予想されます。これは令和6年度診療報酬改定では次の類型で看護必要度Ⅱの要件化が拡大されたことからも伺えます。

急性期一般入院料1を算定する病棟(許可病床数が200 床未満の保険医療機関であって、重症度、医療・看護必要度Ⅱを用いた評価を行うことが困難であることに正当な理由がある場合を除く。)、許可病床数200 床以上の保険医療機関であって急性期一般入院料2又は3を算定する病棟、許可病床数400 床以上の保険医療機関であって急性期一般入院料4又は5を算定する病棟及び7対1入院基本料(特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。))

また、令和6年度診療報酬改定資料の中でも「負担軽減及び測定の適正化を更に推進する観点から」要件化を拡大する旨が書かれており、Ⅱへの移行が望ましいとされていることが伝わってきます。

「測定の適正化の観点」という表現については、各病院の看護師等がそれぞれ評価を行う看護必要度Ⅰに比べて、レセプトへの登録を基本とした看護必要度Ⅱの方が評価者による評価のバラつきを抑えやすく、評価における公平性を保ちやすいという側面があってのことと思われます。

次に病院にとってのメリット、デメリットを見てみましょう。

看護必要度Ⅱへの移行は病院にとっては看護師の記録業務の負荷軽減という大きなメリットがあります。潜在的なデメリットとしてはレセプトの登録を待つ必要があるため、評価のタイムリーさが看護必要度Ⅰに比べてと劣り得る点があります。

診療報酬改定のトレンドのみならず社会全体、医療業界全体としても働き方改革の推進が求められています。そのような中で看護必要度Ⅱへの移行を検討することは、非常に重要と考えます。

今後の診療報酬改定で看護必要度Ⅱが要件化された場合には対応が必須となりますので、事前に対策をしておくことも重要です。事前の対策例として「看護必要度ⅠとⅡの項目別の差異を見て、レセプトへの登録漏れが発生していないか」を検証する手法は、多くの病院で取り組まれています。

先ほど述べた通り、一部の項目では差異が出る可能性のある項目もありますが、弊社の経験上では、呼吸ケアは比較的乖離が少ない傾向にあります。

一方、DPC対象病院や地域包括ケア病棟などの特定入院料をお持ちの場合、請求にあがらない診療行為の登録への意識が不十分なケースがよくあります。このような場合、看護必要度Ⅱに移行した際に実態よりも低い重症割合となってしまう可能性があります。登録の漏れがないかは特に注意して確認しておくことをお勧めします!

6.さいごに

もし、看護必要度Ⅱへの移行の検討等に関して、院内でできていない部分やご不安に思う部分がございましたら、お気軽に弊社までご相談ください!

○ ご相談例
・院内で独自に計算を行っているがきちんと評価できているか心配
・看護必要度ⅠとⅡでの評価差を知りたい
・項目別の評価差異がどのような結果になるか知りたい


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その他、重症度、医療・看護必要度の知りたい内容については、下記コラム(全8回)をぜひご覧ください。

コラム1:重症度、医療・看護必要度とは?
コラム2:重症度、医療・看護必要度は何のため?
コラム3:重症度、医療・看護必要度は何を評価する?
コラム4:重症度、医療・看護必要度ⅠとⅡの違いは? ※当ページ
コラム5:重症度、医療・看護必要度はいつ評価する?
コラム6:重症度、医療・看護必要度は何点必要?何割必要?
コラム7:重症度、医療・看護必要度はどう変わってきた?
コラム8:病院全体で取り組む重症度、医療・看護必要度の精度向上